イケメン大奥

「たぶん……、思い違いかもしれないんだけど」

「はい」


「あたし……、ハルにうまく使われているような気がする」

そう。あたしは頼りなくておバカで、素直というより、
何にも知らなくて、褒められたらうれしくなって、

ただそれだけの事で動いている。

動かされている。


レイは無言で、あたしの肩を抱いたまま聞いている。

寝てるわけじゃないよね?

横目で顔を伺ったら、目と目が合ってしまった。


「あ、あたし、ハルを悪く言おうと思って言ってるわけじゃなく」

途端に早口になってしまう。


焦る。




「わかっていますよ」

レイはあたしの右耳にささやきかける。
ふう、とレイの息が耳に触れて、くすぐったい。


わざと息を吹きかけて相手の反応を楽しむ、意地悪さ。



大奥に居れば、絶妙な色気というか駆け引きが出来るように、

なってしまうものなのかもしれない。


「おっしゃる通り、それがハルの一面です。そして最大の武器」

ぶ、武器?
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