イケメン大奥


「表使は外の世界とも交渉しないとならない役目です。狡猾に立ち振る舞わ
 なければならぬ事もあります」

だからって、あたしにまで……。ぶちぶち。

納得のいかないあたしの表情を見て、
レイの掌が頭をぽんぽん撫でてくれる。


「ハルは御しやすい上様に居続けてもらいたいのですよ」

「へ?」


何だか、そのような話をハルから遠回りに言われたような……。


「苦労が多い仕事ですから。人の言いなりになるばかりでは、務まらない。
 彼が他人の心の内を読むことが出来たとしても……、

 彼だから、出来るのかもしれません」


「キヨには出来ない?」


「できませんね」

レイは断言。


あたしも、それはそう思う……直情的なキヨはストレス溜めそう。


「なかなか出来る人間がいないからこそ、彼の肩の荷が増える」

レイは分かっているんだ。

レイだって、「上臈御年寄」であるのは大変でしょう?


「わたくしはキヨや他の者と交代でしていますから」

「ハルはずっと表使なの?」


「そうですね、大奥に来てからずっとです。
 彼はここに来た時には既に大人でしたから」


外の世界では何年になるんでしょうね?

そうレイは言って笑った。




ここに居るとリアルの世界の時間感覚が無くなるのだ、と。








< 144 / 190 >

この作品をシェア

pagetop