イケメン大奥
「表使は外の世界とも交渉しないとならない役目です。狡猾に立ち振る舞わ
なければならぬ事もあります」
だからって、あたしにまで……。ぶちぶち。
納得のいかないあたしの表情を見て、
レイの掌が頭をぽんぽん撫でてくれる。
「ハルは御しやすい上様に居続けてもらいたいのですよ」
「へ?」
何だか、そのような話をハルから遠回りに言われたような……。
「苦労が多い仕事ですから。人の言いなりになるばかりでは、務まらない。
彼が他人の心の内を読むことが出来たとしても……、
彼だから、出来るのかもしれません」
「キヨには出来ない?」
「できませんね」
レイは断言。
あたしも、それはそう思う……直情的なキヨはストレス溜めそう。
「なかなか出来る人間がいないからこそ、彼の肩の荷が増える」
レイは分かっているんだ。
レイだって、「上臈御年寄」であるのは大変でしょう?
「わたくしはキヨや他の者と交代でしていますから」
「ハルはずっと表使なの?」
「そうですね、大奥に来てからずっとです。
彼はここに来た時には既に大人でしたから」
外の世界では何年になるんでしょうね?
そうレイは言って笑った。
ここに居るとリアルの世界の時間感覚が無くなるのだ、と。