イケメン大奥

「レイは大奥にいつ来たの? やっぱり携帯のサイトから?」


あたしの問いに、ふとレイの微笑みが消える。

「いえ、パソコンからです。わたくしは、少年でした。

 身寄りのない少年だったのです」


……え? 今、なんて?

身寄りがない少年だった、そう言ったよね?


「驚かれましたか。この大奥では関係のない事です。
 大奥に来て、
 わたくしは救われたのですよ」



リアル世界では、レイには父も母もいなくて、将来が不安だった。

偶然にもインターネット検索をしているときに、大奥へたどり着いた。


「帰る場所がある者が、大奥との行き来を望み、消えていきました」


だから結局のところ不幸が幸いしたのですよ、と。

レイは言う。ほんの少し、寂しげに。



どんな時も淡々と冷静に話す男性が、ほんの僅かに

寂しさを見せてくれた。



それは、とても大切な事だと思う。


「あなたは大奥の皆に好かれる上様なのですよ」


レイは、ほら、厳しく冷たい言葉の中に、ほんわか温かい言葉を挟むの、

真実のレイの姿が現れているのかもね?
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