イケメン大奥
「わたくしはそのドレスが気に入りません」
きっぱり言い切るレイの表情が、以前見た少年の顔になっている。
しかも、
目の下が朱色に染まっている。
可愛い。くう、かわいすぎる。
意地悪を取り除かれたレイというのを見る機会ってなかなか無い。
あたし自身はこの紫のドレスが気に入った。
濃い紫は地味に思えるけど、光沢のある生地に白い蘭の刺繍が、
裾から腰まで贅沢に散りばめられている。
胸元が広く開いているのも気に入った。
どう? 感想はそれだけ?
上様になる余裕からか、正面からレイの肩に手を軽く掛ける。
背伸びするあたしの胸元に目がいかないように
視線をそらすレイ。
やっぱり、
かわいすぎる。
そう思ったら、レイの唇があたしの唇に重なった。
行き場を失う手。でも、いいの。
レイが力強く背中に手を回して、支えてくれるから。