イケメン大奥

ノックの音の後に入ってきたのは、御小姓たち。

あたしの髪をセットして、メイクをし、ジュエリーを合わせて、靴を選ぶ。


「上様は幸運な方でございますね」

褒め言葉が耳に痛い。

耳元を飾ろうとした御小姓の手が止まる。




「上様、この痣、赤いですね。痛くないですか?」


レイが何食わぬ顔で鏡の中のあたしの表情を見ている。
照れた少年のレイは、そこにはもういなかった。

「メイクで隠して差し上げて」


機械的に御小姓に命ずるレイをあたしは留めた。

「いいの。そのまま、見えるようにしておいて」




咳ばらいが部屋に響くのを、快く聞く。

あなたが付けてくれた愛のしるし。

罰のしるしも受けたのだから、この嬉しいしるし。



レイのあたしへの愛のしるしは、見えるように取っておきたいの。


髪を結ってデコルテには金粉の入ったクリームを塗り、白いパンプスを履く。髪留めは小さなティアラ。」

王女様みたい。


くるりと回ってみる。
眩しそうに見つめてレイが跪く。

「さぁ、上様の御成りです。挨拶の儀式に参りましょう」

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