イケメン大奥
キヨが真っ先に進み出て、
「どうかわたくしをお使いくださいまし」
と平伏した。
決して大きくない細い身体のキヨが、頼もしく思える。
あたしの傍らでは、レイが苛々して他の者に声をかける。
「御年寄みずから、上様をお手伝い申し上げるというのに、
そなたたちのざまは、なんだ」
苛々しているのは、キヨが名乗り出たから。
平伏していたキヨが顔を少し上げて、あたしに舌を出して見せた。
「もう、よい! わたくしからふさわしいと思う者を指名する。
その者は、上様と共に図書室へ行くように」
あたしはレイがリストを作るために広間を出たのを見届けて、
皆に呼びかけた。
「図書室に行く者は、共にまず食事をしてから参りましょう」
レイが奉仕する者のリストを持って、広間に帰ってきたとき、
図書室で調べものをする志願者が急激に増えたのは、
言うまでもない。