イケメン大奥

後ろを振り向くと観念したような、

マスクを付けた男性たちの顔が並んでいる。


変なの。

笑っている場合じゃない、この大量の蔵書の中から、

大奥とリアルな世界の時間の謎を

調べないといけないんだから。


「この蔵書を一冊ずつ順に読んでいき、読めた本は、

 ここに積み上げて。

 調べてもらいたいのは、

 『大奥の時間のしくみ』について」

あたしの説明に、男性たちは首を傾げている。


そっか……、この人たちは、

そんなの関係ないもんね。


大奥に来て、そのまま居たら、

時間のしくみなんて知る必要ないし、

時間感覚なんて要らない。


「この手首」

皆に見えるようにあたしは腕をかざす。

手首の包帯を皆に見せる。


「大奥を出て、いったん消えたんだけれど、
 大奥に来たら復活したの」

おおお。


皆のざわめきが起こる。




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