イケメン大奥
『大奥を一度出て、また入ると寿命が縮むらしいからな』
『健康を害するってホントだったんだな』
『俺らはここを出ないし、出るつもりないもんな、
関係ねぇよ』
『向こうの世界では俺らみたいなもんは、
ホストいうて、健康を害するまで酒飲まされるからな』
『ええっ、そうなんですか』
『上様、おいたわしいですな』
『その分な、まぁ、ほら……』
うるさい。ウルサイ、五月蠅い!
「手を動かして」
ようやく皆の口が閉ざされた。
梯子や脚立で棚の上の本から順におろしていき、中に目を通す。
あたしは、
手首を庇いながら、ランやレンに重い本を持ってもらい、
傍で開いてもらう。
ランが水筒を持ってきていて、
林檎の匂いのする茶色い液体をコップに注ぐ。
「上様、どうぞ」
マスクをしていても、甘い果実の香りが鼻の奥に広がっていく。
アップルティー。
口にすると喉に広がる林檎の
爽やかでほんのり甘い、蜜の味。