イケメン大奥

 
「おはようございます」



控室で鮮魚コーナーの制服に着替えて、販売ブースに向かう。


鮮魚店のおやっさんたちに挨拶をして、


手を丁寧に洗い、消毒をする。


生ものを扱うので、衛生上のことはとびきり厳しい職場だ。




そうして、午前中に並べる刺身のパックと値札シールを貼る作業に入る。


おばちゃんパートの南さん(あたしは『ミナミのおばちゃん』と呼んでいる)が早速あたしにささやいてきた。




「ホラ、今日、あの男の子、来るかね?」


あの男の子、とは、午前中に必ず魚を買いに来る若い男の子のこと。


男の子といっても、20代くらい。


午前中に生魚を買いに来るから、学生さんとか、時間がある人には違いない。


「可愛い子やね」



ミナミのおばちゃんは、この男性がお気に入りなのだ。


じつは……、あたしも気になっている。



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