イケメン大奥
「どれがいいかなぁ」
やっぱり学生かな。持っている肩に下げているカバンや身に着けているものが、学生っぽいというか。
目の下に少ししわがあるんだ……、あ、笑いじわ?
奥二重なんだ。ちょっとたれ目だけど、そこが優しそうな雰囲気を出してる。
「あの」
彼の声に、観察から引き戻された。
「ブリ、どれがいいと思いますか」
「あ、ハイ、これとか……あと、その左のとか、どうですか」
「じゃあ、……コレにします」
彼の大きな手が左のパックを陳列台から取り上げる。
それは、右手だったけれど。
キラリと蛍光灯の下で光る、薬指にはまった指輪。
銀色のシンプルな指輪……。
「お買い上げ、ありがとうございます」
あたしは、しょんぼりしながら、お辞儀をした。
これが、あたしのリアルだ。