イケメン大奥
もっとちゃんと説明しておいてよ!
『いや、もう来たくなさそうだったからさ』
あのときは、あの時のことで。
『わかったよ、今度は早く来られるようにしてやるよ』
キヨは面倒くさそうに、答えてくる。
『今日は、もう上様が決まって、これからご挨拶の儀式なんだ』
そう。あの、広間での挨拶のことね。
『だから行かないと。そうだな、そちらが夜になったら呼んで』
わかった……。
そこで、ふっと頭の中の声が消えた。
もう一つ、あたしに確実にわかったことがある。
選ばれた女性だけの大奥が、時間のゆがみの中に存在する。
そして1日だけ、イケメンの男性たちに囲まれて過ごすのだ。
あれは夢の出来事じゃなかったんだ。