イケメン大奥
2.come’in 大奥
19時、鮮魚店の勤務が終わってから、あたしは急いでデパートを出た。
「お疲れさまです」
ミナミのおばちゃんに挨拶をするのも、もどかしくチャリに乗る。
チャリのペダルを必死でこいで、全速力で街中を駆け抜けた。
早く帰って、キヨにお願いしなくっちゃ。
気持ちを集中させて、コンタクトをとらないといけない。
だって、早くしないと、あたしじゃない誰かが、また大奥の「上様」となる。
一日1人の限定なんだもん。
しかも早い者勝ちなんてさ。
スーパーの先着△名さま、みたいだ。
とにかくキヨの声に従えば、大奥に戻り、仕事のストレスを忘れて、
今度こそ、
「あたしは大奥の主人、上様になりきる」のだ。