イケメン大奥


カツン、カツン、カツン。



硬い床に靴があたる音が、規則正しく響いている。



カツン、カツン、カツッ。



最後は鋭い音をたてて、足音は止んだ。


瞳を開けると、あたしはリアルな世界とは違う世界に来たことを知る。



時間のゆがみの中にあるという世界、男性ばかりの不思議な世界。



でも今回、あたしはなぜか後ろに両手を縛られている。
着ているのはシンプルな麻の白いワンピース。バレーシューズのようなヒールのない靴を履いている。




「どういうこと?」



つぶやいた言葉は小さな声になって、あたりに響いた。


冷たい床の上。



「目覚めたようですね」


冷やかな男性の声に顔を上げる。


短いグレーの髪に長い手足。長身の美しい男性が険しい顔をして立っている。


見下ろす瞳の中に冷酷さがうかがえる。
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