イケメン大奥


『俺は頼りにされて、うれしかったんだ……』


キヨの涼やかな瞳から涙があふれてくる。


『あや姫と再度、逢いたかった。好意をもっていたのは、俺だけか……』


がっくりと肩を落としたキヨなんて、見たくない。




「どうか、どうかキヨ、いえこの者をお助けください」



あたしは後ろ手を縛られたまま、長身の男性を仰ぎ見る。


お願いだから、あなたは偉い役割の人なんでしょう? 助けてよ……。



あたしの嘆願に男性は膝をついた。


その後ろから、ひとりの御小姓がささやきかける。


そのささやきに、彼の表情は、憂鬱(ユウウツ)そう。




「姫様、あなたは救われました」


彼はあたしの腕を縛っている縄を解いた。



「先ほど、あなたが『上様』となられました」


一日の間だけの、「上様」。






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