イケメン大奥
あたしの言動を無視して、レイは傷の手当てに集中しているかのよう。
ちょっと。
こちらを向きなさいよ!!!
怒りがそうさせたのだと思う。あたしは腕を自分のほうに無理やり戻した。
その反動で、慣れないミュールによってバランスを崩し、椅子から転げ落ちてしまう。小姓たちが駆け寄って、あたしに椅子を差し出してくれるが、
あたしは、立ち上がってレイを睨み付ける。
怒りに満ちたあたしの顔に、さすがに驚いたのか、レイは包帯を手に立ち尽くす。
あたしたちの間に少しの間があって、
レイは吹き出したのだ。
「失礼……ああ、良かったです、安心いたしました」
何が、安心したのよ。