イケメン大奥
4.決闘
結局レンが1サイズ大きいドレスに取り換えてくれて、お腹まわりがすっきりした。だけど、よくよく見ると刺繍が違う。
「ああ、この刺繍はランが手作業で入れているんだ」
器用~~……。 あたしは感嘆するしかない。
同じクリーム色の生地で、こちらのドレスには小さな蘭の花の刺繍が入っている。
「きれい」
見入っているとランが真っ赤になって照れていた。おかっぱの短い髪は艶々の栗色で、つい触りたくなる。なでなでしてしまう。猫毛だから、さわり心地がすごくよいの。
「ぼくも」
頭を突き出さないでも……撫でますよ。レンがすかさず自分の頭を突き出してくるのには、笑える。同じようにしてもらいたいのね。
「ランはさ、自分が気に入ったドレスには、必ず蘭の花の刺繍を入れちゃうんだ」
「上様、そんな……申し訳ありません。『蘭』という名を気に入っていますので」
「誰がつけてくれたの?」
「死んだ母です」
蘭と蓮。まだ少年なのに、母親がいないなんて。
「大奥に、どうして来たの?」