イケメン大奥
「ぼくたち、双子だからどちらか働けって親父に言われたんだけど」
レン、得意げだ。明るい話題ではないけれど。
「ふたり一緒がいいから、ランが大奥へ行くなら、ぼくもついて行きたいと申し出て来たのさ。叔父の紹介だからふたり一緒に来れたんだ」
無邪気なレンを見ていると兄がとても好きなことがよく分かる。こちらは犬タイプ。ふたりは見た目と違い、性格は全く違っても慕い合っている。
ランはずっとレンの無礼を気にして注意していながら、離れようとしないもの。
クリームのドレスを着た後は、髪を整えた。
「キレイな黒髪ですね」
ランは手先が本当に器用で、いろんな髪型を試してくれる。
「本日はまとめずに、せっかくですからそのまま流して、耳元を生花で飾りましょう」
ちょっと中華風に耳元を編みこんで、あたしの耳元には小さな薔薇が飾られる。
「小さな薔薇だとバランスがいいね」
全身がうつる鏡で確認する。新しく用意されたミュールは、履いた感じが柔らかくてふわりとしていて高さもドレスの丈に合っている。
こんなおしゃれしたの、あたしの人生の中で、皆無だ。