イケメン大奥
決闘の間は、広間を出て下の階にあった。
先に連絡があったのだろう、上座に演台が設けられている。
「審判は、どの者にさせましょうか」
レイの問いに、大奥経験にもフェンシング知識にも疎いあたしは答えられない。隣からレンが助言? する。
「上様、表使の春(ハル)がいいよ。フェンシングに詳しいし、公平な立場で審判が出来る人だから」
「コラ、またレンは出過ぎたまねを。でも、レンの言うとおりだとは思います」
ランがレンの提案を支持したため、あたしは周囲にいる他の者の意見をきいた。皆、ハルという表使を推(オ)したため、ハルを呼ぶ。
「騎士道に従い、公平に審判する所存であります」
皆の推薦のもと、あたしの前に進み出たのは、壮年の恰幅のいい男性。中年男性といえども、その体つきは中肉中背、全く無駄な肉がついていない。細くしなやかな身体をしている。
「フェンシングの経験はあるの?」
「ええ。ほんの30年です」
30年のキャリアがあれば、審判として信頼できそう。
「では、ハルに審判を任せます」
上様らしく命じることが初めてできた瞬間だ。皆があたしの前にひざまずく。そうして設けられた席へとあたしたち見物人は移動した。
キヨ、レイ、共に白いフェンシングのユニホームに身を包み、剣をもって登場する。
いよいよだ。