イケメン大奥
ふたりの身体検査を審判がする。
キヨの身体は罰を受けたことで、あちらこちらに打撲がある。
「勝負にハンデをつけましょうか?」
ハルの提案にキヨは首を大きく左右に振る。白い細めの身体がこの闘いに堪えうるのか、心配だ。
しかし、キヨの強い要望で、ハンデなしの勝負となった。
ハルは挨拶の合図を送る。向き合ったレイとキヨは「気をつけ、礼」の号令に従ったあと、マスクを着用して、ラインに前足のつま先をつける。
「構え」、次の審判の合図で、それぞれが効き手に剣を持ち、戦いに備えて構えた。
緊張が高まってくる。レイは長身を生かして高い位置で構え、キヨは重心を低くしてレイよりも低い位置で構えている。
「準備はいいか?」
静かに構えている2人に、ハルが合図を送る。
「Oui(ウィ)」
微妙にずれて、レイとキヨの順に返答する。いよいよだ。
「Allez(アレ)」
「初め」の合図で、素早く剣先を相手に向かって突き出す。レイの剣先が先にキヨを切りつけたため、キヨは一歩下がって防御に徹する。レイの剣の動きは長い腕を有効に使った、大胆かつ正確なラインで切り込んでくる。
「ね、すごいでしょ」
レンは前のめりに乗り出して、レイの鋭い剣の動きを見つめている。
一方、深く切り込んでくるレイに苦戦しているのがキヨだ。攻め込むきっかけを失って、防御に徹する。その動きは、なかなか堂々としているがレイよりも鈍い。
やはり体の節々が痛むので、無意識に身体を庇いながらの攻撃になるからだろう。
深く腰を落としてレイに切り込むことが出来ずにいる。
キヨ、がんばって……。
あたしの願いが聞こえたのか、押され気味だったキヨがレイの切っ先をとらえ、今度は攻撃権を奪い取った。
スピードはレイには劣るものの、集中してレイの腰から下を疲れさせようと低い位置からの攻撃を繰り出している。
お互いに距離を取ったりつめたり、
脚力を使いながら、相手に突き出される剣のしなる姿は華麗だ。
あたしは息を詰めて、ふたりの攻撃および防御の様に見惚れていた。