イケメン大奥
それでも勝利したレイを、褒めたたえないわけにいかない。
「レイ、勝った褒美は何が良い?」
レイの短いグレーの髪も、大量の汗でぐっしょり濡れている。
「……勝てばいい。それだけだ」
汗をぬぐいながら、淡々と言うレイ。
「上様、身体を洗って着替えてきても、よろしいですか?」
「うん、……そうね。ふたりとも、汗びっしょりだから」
キヨは少し休んだほうがいいかもしれない。息が上がって言葉が出ないようだ。それでも身体を引きずるようにして、レイの後について行く。
審判をしていた表使のハルが遅れて演台から降りてきた。
「あの、ありがとう……ございます」
あたしの前に挨拶のためにひざまずくハルに、ぎこちなく礼を言う。
「いえ、この程度のことならば」
壮年のハルの髪には白いものが混じっている。
「ハル……さんも、お疲れになったでしょう」
「いい決闘といいますか、試合を見せていただきました」
大人の余裕だろうか、鷹揚(オウヨウ)に笑ってみせる。
「キヨも、体調が良ければもっと切れのいい動きを見せたのでしょうね」
あたしには、ハルの笑顔が眩しい。キヨやレイのような青年にない、奥深い優しさを感じる。壮年の経験による余裕というか。
ほわん、となって見ていたら、ハルに尋ねられた。
「ところで上様、こちらにいらしてから、何か不自由をされておりませんでしょうか」