イケメン大奥
「わたくしは、表使ですので、大奥以外の所から物を調達する役目なのです」
大奥で、足りないもの……あたしが欲しいもの……別にない。
不自由もしていない。
あたしの言葉に、ハルも「上様は面白い方ですね」と再び笑顔になった。
「そうかな」
「この大奥に来た女性で、あなたのような欲のない素直な上様であられるのは稀なんです」
え? 皆、わがまま放題になるのかな?
「大奥の頂点の座にいるのが『上様』ですから。ここに集められている男性たちは、あなたが顎でこき使ってもいい者たちです。実際に、こちらに来られた方々の多くは、早い段階でご自分のわがままを通されるようになります」
フーン……、
あたしは命令するのに、慣れないの。
だから大奥の主としては全然しっかりしていないし、顎で使うなんて、出来っこない。
「わたくしも若い頃は、様々な上様にお仕えして苦労しましたのでね」
ハルが決闘の間のドアを開けてくれる。
「ですから、本日の上様のように素直でお優しい方がいつも来てくだされば、うれしいです」
ランが丁寧にハルに礼をした。
「いつも、上様の御衣裳のために材料を調達して下さり、ありがとうございます」