イケメン大奥
挨拶をかわすハルとランを見て、気づく。
あ、そうか。
あたしのこのドレスの生地は、表使が用意してくれたものなのね。
「ランさんは何時も物を見極める目が確かですから、なかなか難しいです」
ハルは微笑んで、「では」と、あたしたちを残して、廊下を歩いて行った。
「ハル、行ったのか」
しばらくの間、去っていくハルの後姿を見ながら立ち止まっていた。そこへキヨがシャワーを浴びて着替えをして帰ってくる。
「あいつ、食えないやつだから、好かん」
「まぁ、表使は御老中方とも職務上親しいですし、外部との交渉をするから、大奥の内情に詳しいですからね」
ランはうっとりして、ハルを見ている。
「ぼくは、ああいう風に歳をとりたいです……」
「あんな腹黒に?」
キヨがあんぐり口を開ける。涼やかな目元にさらりと肩まで伸ばした髪。美青年なのに、結構おどけて面白く一本気。表情豊かだから、打ち解けてくると笑える。
「腹黒で悪かったな」
キヨのうしろから、濡れた短髪を拭きながらレイが現れる。
「お前、自分のことわかってんじゃん」
レイはあたしに挨拶をして、キヨの髪をぐちゃぐちゃにした。
キヨが叫ぶ。
「レイ、お前の事で言ったんじゃねぇよ。ほら、ハルのこと」
「ハルは大奥全体の事をよく見て判断していますから。秀才ですしね、キヨ、あなたよりずっと」