イケメン大奥
「なにを! 喧嘩売ってんのか?」
「もう決闘では勝負がついていますよ。死を命じなかったことに感謝してくれても良いのではないですか」
もう、レイもキヨも! いい加減にして。
「喧嘩していても時間が過ぎるばかりですよ」
ランが2人の痴話げんかに割って入る。
これからどうしよう……。
「兄さん、呉服の間に連れて行ってやったら?」
今まで黙ってランの隣を歩いていたレンが、ひょっこり顔を出す。
「そんな、またレンは変なことを言う。あんな作業場やクローゼットに上様をお連れすることなんて、出来ませんよ」
「面白いと思うんだけどな」
衣裳部屋か……ちょっと興味はある。こんな美しいドレスをどんな男性たちが作っているのか。どんなふうに管理しているのか。
「あたし、行ってみたいのだけれど迷惑ですか?」
あたしの言葉にランが丁寧に答えた。
「上様の命で、お召し物をご覧になられたいのであれば、ご案内します」