イケメン大奥


「時間が限られているんだから、何か短い時間で出来る刺繍をしてみたら」


レンの提案にランの表情が明るくなった7.


「そうですね、お茶をしながら刺繍をするのは楽しいですよ」


「うん、やってみたいかも」


ずっと呉服の間の端でほかの者たちの職務に目を光らせていたレイが、御小姓に早速お茶の用意をするように指示をする。

「呉服の間から出て針仕事をすることは出来ませんので、ご了承ください」

「え。なぜ」


「針やはさみを持ち出すことは禁じられているのです」


レイは呉服の間の者たちに部屋の一角を片づけさせて、あたしたちがお茶をするスペースを作った。


「上様の指示にて、本日は特別にお茶の席を設けましたが、ここは呉服の間、食べ物を散らかしたりなさいませんよう」

レイは言葉とは裏腹に、ランとキヨを見ている。


「分かってるよ」



御小姓がしばらくして恭しく紅茶を運んできた。薫り高いセイロン茶のポットが白いテーブルクロスの上に置かれる。

今日はスコーンのほかに、小さな一口サイズのサンドウィッチとケーキが銀の皿に用意されていた。また、ランの配慮だろう、手をふくナプキンがたくさん置かれ、裁縫道具が別のテーブルの上に用意されている。


「まずお茶をしましょうか」

あたしは御小姓に指示をして、皆の分のお茶を入れさせた。


「ケーキやサンドウィッチは、それぞれ好きなのを取ってもらいましょう」



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