イケメン大奥
あたしは銀の皿から、ケーキとサンドウィッチをひとつずつ選んで御小姓に皿に盛らせる。
その様子をレイは満足そうに見て、次に自分の分を御小姓に取るように命じた。
些細なことも、下の者、その役割を持つ者の手を借りなければならない。それが、あたしにとって慣れないし苦手なことだったのだけれど、ようやくすんなりと頼めるようになってきた。
「呉服の間でなんでお茶を、というのはあるけど」
キヨがスコーンをつまみながら、セイロンティーを口に含む。
「優雅な大奥らしい時間が、やっともてたな」
「セイロンティーはストレートで戴いても、香り高く、甘くておいしいです」
ランは小さな細い手で大きなティーカップを唇に持っていく。
その時、呉服の間の入口がザワザワとして、回転ドアの間から、ハルが姿を現した。
「ハル様」
立ち上がって入口へ向かうラン。
「上様がいらしているところ、申し訳ない。ランさんが欲しがっていた反物が手に入ったのでね」
白くて薄い紙を開けると、深緑色の艶やかな反物がお目見えした。
「ああ、ありがとうございます、これで冬にかけての年配の方の御着物を新調できます」
大人っぽい色だ。色の白い大人の女性が着ると映えるだろう。
ああ、そうなんだ、女性が一人選ばれて上様になるというのに、年齢制限はないんだ。あたしよりもずっと大人で聡明な方も、いらっしゃることも多いはず。