イケメン大奥
こんな子どもっぽい女じゃなくて、綺麗で知識に満ちていて礼儀作法に通じていて、大人の女性。
そんな方が来られるならば、この大奥は平穏で皆は仕えやすいよね。
あたしが反物を見ながら考えていると、
ハルがあたしの視線に気づいてたのか、あたしに丁寧に挨拶をした。
「上様には、もう少し明るいお色がお似合いでしょうね。……人にはそれぞれ似合う色や物があります。上様となられた方、それぞれに良い点がございます。今日の上様は素直で心配りがありお優しいので、嬉しく思っております」
さすが、秀才。リアルな世界に居れば、官僚や会社の役員になっていそう。壮年の貫録が有能さを際立てている。
「あたし、……ここに居る間に、出来るだけ上様としての務め果たします」
「上様、そのお言葉、もったいなく存じます」
「ううん」
様々な美味しい食事、快適な空間で綺麗な服を着て過ごす。上様として得られる特権ばかり行使しないで、
上様にしか出来ない事もしていかないといけないと、思う。
「よく分からないことだらけだけど、あたしがしなくてはいけない仕事があれば、言ってね」
あたしの言葉に、驚いてかハルは下げた頭をふとあげた。あたしの真意を確かめるように、あたしの瞳を見つめる。
あたしの真意だよ……。
未熟だし、1日しかいない上様だけれど、色々してもらって恩返しというか、やっぱり大奥が機能していくように出来ることはしたいもの。