ハーレム ブラッド
それから幸大は口を開かず、議論も無かった。



寒空の下、幸大は姫野とクーニャを送っていた。


「じゃあねぇ〜。」


クーニャが別れ、姫野と二人きりで住宅地を歩く。


「何で?」

姫野が言う。

「何が?」

幸大が言う。

「幸大は無言でいるという約束を最後に破ったわ。

何の解決にもならないような言葉だったけど…沙羅を思っての…助けようとしての言葉だったわ。」

「まぁ、そうだな。」


「沙羅を手放す気はないの?

私たちの時は丸っきりそんな素振りはなかったじゃない。」

姫野が言う。

「そうか?

助けてやっただろ?

最後の方に。」


「そうね…

でも…」

「ん?」

「幸大のその中途半端な優しさとか甘さが大嫌いなのよ。

それから身勝手なところも。」

「嫌いなら離れても構わない。

俺は止める気は…」

「うるさい!!」


バンッ!

住宅地の塀に幸大を押し付けた。

「止める気はないとでも言いたいの!?」

姫野が幸大の胸ぐらを掴む。


「姫野…お前、泣いて…」

「うるさいって言ってるでしょ!!

私はあんたの言葉なんか聞きたくない!!


適当で中途半端で嘘ばっかりなあんたの言葉なんか!」

姫野が叫ぶ。
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