ハーレム ブラッド
「良いのか?」

幸大が呟く。

「何がよ…」

姫野の眼は何かを請うようだった。

「本当に…お前らに踏み込んで良いのか?」

幸大が両手で姫野の頬を両方抑える。

親指で姫野の目から流れる涙の進路を絶つ。


「お前らに踏み込んで…お前らの一生に…

永遠の中に俺の一生という一瞬を刻み込んでも良いのか?」

幸大が言う。

「何を言ってるの?」




少女が追いかけて手に入れたビーズは実は宝石かもしれない。

それでも彼女はそれを自分のモノと言えるだろうか?

ポケットに入れれるだろうか?



安くて…拾っても何も言われないようなビーズ。

それは、もしかしたら高価でその少女の手には追えないような宝石。


自分の部屋に置かれた少女の割ったビーズの入ったガラス細工を壊しても誰も言わないし…少女もきっとそれを悪いと思わない。

もし、それが自分の部屋に置かれたのではなく、美術館の展覧会場に置かれた、ガラスではなくクリスタルで作られたビーズではなく宝石だったら…


容易に踏み込んで…とてつもないことに触れてしまうような感覚を知るものがこの世にどれだけいるだろうか?
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