シンクロニシティー


『ことこぉー? 上から読んでも『コトコ』下から読んでも『コトコ』。変な名前』

『うるさいっ! シュウちゃんだって、シュウクリームみたいだ、変なの!』



「シュウ……ちゃん?」


 会う度にいつもいつも、私の名を呼んでは意地悪を言ってからかう男の子。

 なのに極たまに、すっごく優しい時があって、だから大っ嫌いにはなれなくて。
 むしろ、どちらかというと好き、だった気がする。

 確か歳は五つぐらい上で。

 
 でもどこで会ったんだっけ。
 どうしても思い出せない。



「思い出した?」

「うん。でもちょっとだけしか……」


 シュウは嬉しそうにふんわり微笑んで、ポツン、ポツンと記憶を辿るようにゆっくり話し始めた。


「コトのお父さんは、僕の母がやってる店の常連さんだった。よくコトがくっついて一緒に来てたんだ。でも飲み屋だから、ちっちゃなコトがやることなんか何もなくて。コトが退屈そうにしてるのを見兼ねた母が、僕にコトと遊んでやってって言った。でも結局、いつもいじめてばっかだったけど。頬っぺたパンパンに膨らませて、ムキになって言い返してくるコトがすごく可愛くて……」

 その時のことを思い出したのか、シュウはフッと小さく笑い声を洩らした。


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