シンクロニシティー


 でも今日は違った。

 ヒラリ――
 と、言葉が舞った。


 きっかけはテレビ。


 慣れているはずの沈黙が、今日は一段と息苦しく感じた。
 苛々もした。

 ただ、
 物音以外の『何か』を耳にしたくて。

 食事中に席を立ち、おもむろにリビングへと移動して、テレビのスイッチを押した。


「琴子(コトコ)、食事が終わってからにしなさい」

 感情のない母の言葉に、私の心がひんやりとする。

「ごちそうさま」

 母を見ずに言い放ち、そのままソファーに腰を落とした。


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