シンクロニシティー
人選びは慎重にやらなければ。
前回の失敗から学んだ。
駅の出入り口の端っこに、ずぶ濡れのまま立っていた。
ナンパは当然無視。
今の私に必要なのは、陰鬱な気持ちを吹き飛ばしてくれる遊び相手ではなく、
お金だ。
「君、今暇?」
左すぐ後から、私の頭の上に落とされた言葉。
振り返るようにして見上げれば、見知らぬ男が嫌味のない微笑を私に向けていた。
「うん」
と答え、その男の全身にさり気なく視線を走らせ、隈なくチェックする。
年齢40代のどこか、高級そうなパリッとしたスーツ、容姿も中よりは少し上。
必要十分条件を全て満たしている。
決めた、この男に。
「家出したんだけど、お金がなくて」
自分の口から出た甘ったるい声に、気持ち悪くて寒気すらした。
「そっか、そういうことなら……
おじさんが相談にのろうか?
君、可愛いし」
男は、そう言って、とても愛想良く微笑んだ。