シンクロニシティー


 コクリ――

 戸惑いながらも首を縦に振った。

 それを見て彼は、

「よーい」

 言って悪戯っぽく笑い、走る構えをする。

「どんっ!」

 軽快な掛け声が弾けた。
 と同時に、彼はアスファルトを蹴って駆け出した。


 何が起こったのかわからない。
 ただ、流されるままに。
 繋がった腕と腕の先にある、彼の背中を追う。

 容赦なく降りつける雨粒に顔を顰めた。
 けれど不快じゃない。
 寧ろ冷たくて気持ちがいい。


 久々に全力疾走した気がする。
 私の息は絶え絶えで。


 もう限界――

 そう思った時、彼は店の角を曲がって路地裏に身を潜めた。 
 そうして、壁に押し付けるようにして、私と身体を重ねた。

 右頬が、彼の胸に密着して、思ったより背が高かったことに驚いた。


 やっぱり……
 男の人なんだなぁと、今更ながらに思う。


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