シンクロニシティー
彼は、肘を折った両手を私の顔を挟むようにして壁に付いていて。
密着した身体も、私の顔を囲っている細いけれど予想外に逞しい前腕も、
私の胸を騒がしくさせて仕方がない。
ドキドキする。
だって、こんなに綺麗な男の人、生まれて初めて見たから。
ドキドキして当たり前だ。
決して、彼に対して特別な感情を抱いている訳ではない――
――はず?
身を少しだけ横へ倒して、彼は通りを覗き込んだ。
「よし」
と。
まるで、悪戯に成功した子どものような笑顔で私を見下ろした。
「もう歩いても大丈夫」
更に続けて、ようやく私から離れてくれた。
離れてしまった――