シンクロニシティー
「あのさ、レイジ。最後に一つだけ、お願いがあるんだけど」

「最後とか言うな。これからもいくらでも俺を頼れよ。コトの頼みだったら何でも聞くし。いや別に、下心はねぇよ?」

「誰もそんなこと疑ってないって」

冗談ぽく返して笑えば、携帯の向こうでレイジも小さく笑い声を漏らした。



「で、何だよ? 頼みって」

「シュウにもう一度、海を見せてあげたいなって思って。私たちの思い出の場所だから」



そいつ、眠ったままなんだろ? だったら海なんか見えないだろ?

――って、笑われるかと思った。


そんな無神経なこと、いくらレイジでも言うはずないのにな、不思議。



「良くないのか? その……お前の……兄ちゃん?」

「ううん。もうすぐ良くなるよ。担当の先生もそう言ってた」


嘘がスルリと口から滑り出た。それは強がりだったのか、ただ、レイジを安心させたかっただけなのか、自分でもよくわからない。


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