シンクロニシティー
シュウと二人で、真っ黒な海を眺めていた。今日は曇りだったっけ? 月はどこにも見当たらない。
オフシーズンの海水浴場は本当に真っ暗。闇の中にシュウと二人きり。
悪くない。
不意に、ジーンズのバックポケットに入れてあった私の携帯が鳴りだして、心臓が跳ね上がった。
うるさいから仕方なく取り出して、恐る恐る画面に視線を落とす。
未登録番号からの着信だ。誰だろう、気味が悪い。
けれど、もう恐れるものなんか何もないのだとすぐに思い出す。私は今から、シュウと一緒に消えるんだから。
もう私たちを、誰も傷つけることなんか出来ない。だから大丈夫、平気。
無言のまま電話に出た。
「矢野内さん? 雪枝(ユキエダ)だけど」
告げられた名に、とんでもなく驚いた。
「ああ、雪枝さん。どうしたの?」
「勝手に番号聞いちゃってごめん」
「いいよ、そんなの」
そう答えて、思わず笑ってしまった。
あの雪枝さんが、気遣うようなことを言うなんて、何だか無性におかしかった。