シンクロニシティー
「ふうん。そう」

「何だよ? 疑ってんのかよ?」

「別に……。過去のことなんかどうでもいいよ。でも、もしも今、浮気したら許さないから。もうすぐ生まれるこの子の為にも、パパにはちゃんとして貰わなくちゃ」


妻はそう言って、大きくなった腹を愛しそうに右手で撫でた。男もつられるように、その膨らみにぎこちなく左手で触れる。



「その子、今、どうしてるの?」

「何だよ、過去のことなんかどうでもいいんじゃねぇのかよ?」

「過去のことじゃないじゃん、今のこと聞いてんじゃん」

「きったね」

「どこがよ?」


二人はじっとりと睨み合う。

けれど、すぐにプッと同時に吹き出した。



「今か……。今は、好きなやつと幸せにやってるよ、多分。俺がフラれた後、二人は結ばれたから。ようやく一緒になれたんだ」

「レイジ、踏み台にされちゃったんだ?」

「うるせぇよ、ほっとけ。けど、俺とルミコが今、こうして幸せでいられるのは、この子のお陰だから」


言って男は、目を細めて微笑んだ。


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