シンクロニシティー


 と、甲高い機械音が静かな空間を切り裂いた。


 彼は椅子を少しだけ後方に引いて立ち上がった。

「お風呂、先どうぞ」

 と、私の肩にポンと手をのせた。

 ヒクッと身体が小さく跳ねた。
 『お風呂』という単語に過剰反応してしまった。

 そうだった、彼は『僕が買う』と言ったのだ。
 『買う』とはそういうことだ。

 彼に抱かれるのは嫌ではない。
 むしろ光栄だ、夢のようだ。

 けれど、抵抗がある。

 彼の身体が汚れてしまうような気がする。
 美しい芸術品を、私が穢してしまう。

 ほんの一瞬のうちに、目まぐるしいほどに様々な思考が私の頭の中を駆け巡った。


 彼はそんな私の想いを察したのか、

「心配しなくていいよ。
 僕、ゲイだから」

 言って、全神経が麻痺してしまいそうなほどの魅惑的な笑みを浮かべた。


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