シンクロニシティー


「今更そんなこと言われたって困るよ。
 セックスしないなら、お金貰えないじゃん。
 私帰るね。
 ありがとう、紅茶ごちそうさま」

 そう言って立ち上がり、彼に背を向け玄関へと向かう。
 こんなメルヘンワールド、早く脱出しなければ。

 危険すぎる、中毒になりそう。
 まるで麻薬のようだ。


 けれど、背後から腕を掴まれ引き留められた。
 振り返るようにして見上げれば、彼の顔が間近にあって、そのブラウンの瞳が何故だか哀しげに揺れていた。


「行くところがないんでしょ?
 だったら、ここに居ればいい」

 理由はわからないけれど、彼は私を帰したくないらしい。
 いや、帰らないけどね、家には。


「居場所が欲しい訳じゃない。
 お金が欲しいの」

 彼の優しさが重たくて、苦痛に感じて、わざと踏みにじるような言葉を口にした。

「どうして?」

 彼は傷付いたような顔をして、切なげに問う。


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