シンクロニシティー


 彼は、困っている人を見たら、助けずにはいられない性質なのかもしれない。
 助けられなければ、罪悪感に苛まれ、自分を責め続けるのだ、きっと。

 それを恐れているのかも。

 でもそんなこと、私には関係のないことだと正直思う。
 彼の自己満足の犠牲になるのはゴメンだ、迷惑だ。


「遠くへ行きたいから。
 ここじゃ、家に近すぎる」

 本音を告げた。
 私の望みはここに置いてもらうことではないから。


「僕は――
 君にここに居て欲しい。
 いつか、一緒に遠いところへ行こう」

 信じられない。
 何を言い出すのだ、この人は。

 意味がわからない。
 何これ? 何なのこれ?
 全く理解できない。


 あなたは同性愛者で、女性には興味ないわけで。
 だから、私はあなたにとって必要ではないはずだ。

 返す言葉が思い浮かばず、呆然とただ、彼を見詰めていた。
 美しい彼の顔に、見とれていたのかもしれない。


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