シンクロニシティー
「苦……しいよ」
恐る恐る口にした。
彼の胸に閉じ込められている時間はとても長く感じられた。
心地良かったけれど、何故か呼吸が巧くいかない。
酸欠になりそうだ。
彼が弾かれたように私から離れ、私の身体がスーッと瞬時に冷えていく。
自分がそう仕向けたくせに、今度はどうしたら良いかわからなくなる。
どこに居たら良いのかすらわからなくなる。
ここに立っていること自体良いのだろうか、と不安になる。
わたしは……
ここに居ても良いの?
次の言葉が見付からず、縋る思いで彼を見詰めた。
「ごめん」
また困ったように笑うと彼は続けた。
「お風呂、どうぞ」
謝らないで欲しい、私なんかに。
そう思うも、それを言葉にすることはとても難しくて。
「うん」
とだけ答え、ゆるゆると回れ右をして浴室に向かった。