シンクロニシティー


 ちょっとだけ、バカにされているような気がした。

「可愛いなんて言われたことないし」

 不満げに言い返す。

 欲望を満たす行為だけが目的の男が軽々しく口にする、安っぽい『可愛い』なら貰ったことはある。

 けれど、レイジは私のことを『可愛い』とは言わない。
 一度も言われたことがない。

 だから身体を許したのかもしれない。


「はいはい。
 風呂入っておいで」

 そんな私の反論もサラリと聞き流し、シュウは私の肩を両手で掴んでクルリと身体を回転させる。
 そして、
 背中をそっと、優しく押された。


 浴室へ向かうと、

「バスタオル、脱衣所の棚ん中のやつ適当に使って」

 少しだけ張った声が遠くに聞こえた。


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