シンクロニシティー
「コト、起きて」
身体を揺さぶられ、その振動が脳まで届いた時、そんな声を私の鼓膜がぼんやり受け止めた。
もうすっかり慣れ親しんでしまった、低いけれど柔らかいその響きは心地良くて。
私の耳はそれを雑音だとは認識せず、目を覚ますなんて選択肢は微塵も脳裏に浮かばない。
すやすやと。
再び意識は深く深く落ちていく。
もう少し寝かせて。
それは声にならなくて、頭の中だけで切に願う。
「起きなさいっ!」
痺れを切らしたように今度は耳元で言われた。
パチンと弾けたようなそれは容赦なく私の耳に突き刺さった。
たちまち、パッと開けたように意識がクリアになった。