とある愛世Ⅰ
「……ねえ。」

「ん?」

「ちゅーして。」


わたしの唐突なその言葉で、ようやく彼の顔がゆっくりとわたしに向けられた。

その表情は、どこか困ったような、呆れたような、そんな感じではあったけれど。


「どうした?さっきいっぱいしたじゃん。」

「関係ない。」


こんなにも傍に居るのに、誰よりも一緒にいるのに。

何度だってカラダを重ねて、幾度もわたしの気持ちは彼へと伝えてるというのに。

わたしは、彼の1番になれない。

それこそ、今まで幾度となく向き合ってきたその事実が、考えるほどに重苦しくなっていく。
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