君を忘れない。



そして、ついに1943年10月。



在学徴集延期臨時特例を公布。



20歳以上の男子に、例え学生であっても徴兵検査を実施し、軍隊へと動員した。



日本はもはや、敗戦まっしぐらだった。



敵は、すぐそこまで迫っていた。



私たち一般庶民は、真っ暗な未来へ向かって、それでもただひた向きに、生きることだけに必死だった。



「なにしてんの?」



便りが届いた翌日。



私は兄の大学へと来ていた。



初めて見る建物。



沢山の人。



キョロキョロとしていた私は、随分と浮いていたのだと思う。



「迷ったのか?どこに用事?」

「あ…その…」

「可愛いね。誰かの妹?」

「ほんとだ。名前何て言うの?」



すぐに囲まれてしまった。



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