君を忘れない。
だけど私は雨竜さんに会える事が、待ち遠しく思うようになっていた。
二ヶ月の間に、雨竜さんのことを少しだけ知ることが出来たから。
例えば、大学で医学を勉強していると知った。
初めて会ったとき、だから迷わず駆け寄ってくれたのだと知った。
歳は私の三つ上だと知った。
弟と妹がいると知った。
名前を、雨竜一平と言うのだと知った。
些細なことでも、口数の少ない雨竜さんが話してくれることが、知っていける事がとても嬉しかった。
そして私は、雨竜さんから一平さんと、呼び方も変えた。
「好きにすればいい」と、ぶっきらぼうに言ってくれたから。
素っ気ないけど、本当は優しい方。
今だって、私の歩幅に合わせて歩いてくれているのを、私は知っている。
「一平さん、休憩しなくて大丈夫ですか?」
私なんかよりも、はるかに重い荷物を持っている一平さんの額には、汗がダラダラと流れていた。
「いや…大丈夫。」
私の気遣いを断ると、一平さんは先程と変わらない速さで歩き続けた。