君を忘れない。
私も一平さんの斜め後ろを、歩いて着いていこうとする。
しかし一平さんは、ピタリと足を止める。
「…悪い。やはり少し休んでから行こう。」
「あ、はい。そうしましょう。」
どうかしたのだろうか。と不思議に思ったものの、先に木陰に腰掛ける一平さんの隣に黙って腰掛けた。
たまに吹く風に草が揺れて、カサカサと音がする。
それが心地よくて、しばらくの沈黙さえも気にならなかった。
「お加減でも、悪いですか?」
風がピタリと止んだ時、私は一平さんに尋ねた。
「…いや。」
今日は一段と暑いから、気分でも悪くなったのかと思ったのだけれど、一平さんは首を横に振った。
「そうですか…?」
ただ休みたかっただけなのかもしれない。
私は自分で勝手にそう解釈し、再び草の音に耳を澄ました。
真上にあった太陽は、西へと傾き始めていた。
一平さんは、少し離れた小川を黙って眺めていた。