君を忘れない。
貴方の声に、一喜一憂して。
貴方の体温を少しでも感じた時、また胸が鳴る。
「体調が何より優先だ。どうしても来れない時は、俺が行く。」
そう言うと一平さんは立ち上がる。
紅く染まった太陽が、私達の長い影をつくる。
「身体を一番、大切にしろ。」
お医者さんを目指しているせいもあってか、一平さんは他人の体調にスゴく敏感だと、私は思う。
初めて会った時も、私の身体を心配してくれていた事を思い出す。
「立てるか?」
一平さんは私に、優しい手を差し伸べる。
休憩しようと言ったのも、自分が休む為でなく、きっと私を休ませる為。
「ありがとうございます。」
手と手が触れる。
男の人の手は、とても大きくて骨張ってて、硬くて。
兄以外の、男の人の手。
だけどその手は、溢れる優しさで暖かかった。
「どうして、私の体調が悪いと思ったのですか?」
「…普段よりも若干頬が紅い。普段のお前は、桜色をしている。」
この人は、たったそれだけで気付いてしまうというのか。
隠し事は無意味なのだろう。