君を忘れない。
出したいだけ出す?
とは、涙のことだろうか。
…なんて不器用な物言いなんだろう。
失礼ながらに、私はそんなことを思ってしまった。
「でも…」
初対面の、それも男の人にハンカチを借りるだなんて、少し気が引けてしまう。
「衣服が濡れている。」
躊躇う私に一歩近寄り、その人はハンカチを私の頬に押し当てた。
「!」
驚いた私は、からだ全身に力が入ってしまい、首をすくめた。
たけどその人は、私の頬にポンポンとハンカチを押し当て続ける。
「……っ」
その不器用な優しさが胸に染みて、私の目からは余計に涙が溢れ出す。
止めなきゃと思うほど、止まりはしなかった。
「…何故、泣くのだ。」
困ったように、その人は言った。