君を忘れない。
「必死で忘れようとしてるのに…優しくなんてしないで下さい…!」
本当はその優しさにさえも、胸が鳴る。
忘れることなど、初めから不可能なのではないのかと、そう言っているくらい鼓動は早く。
その瞳に映る事が、やはり嬉しい。
だけど願うのは、貴方の幸せ。
「…どうか、私に構わず。今まで、本当にありがとうございました。」
一礼してから、私は駆け出した。
一平さんがどんな表情をしていたのかは、分からなかった。
なにも言わず動かず、ただ小さくなっていく私の後ろ姿を見ていた。
もう会うことはないだろうと、覚悟した。
会ってはならないと、そう決めた。
それが正解なのだと、言い聞かせた。
家に帰るまでの間ずっと、涙はとまりはしなかった。
私は、こんなにも弱かっただろうか。
こんなにも、すぐ泣いていただろうか。
戦争という、見えない恐怖にずっと怯えていた。
いつか誰かが戦地へ。
そんなことが頭から離れないでいた。