君を忘れない。
灯りという灯りはすべて消え、私たちは研究室ごと闇に包まれた。
なにも見えない。
「空襲…?」
震える声を振り絞った。
「そっちに行くから、じっとしてるんだ。」
「はい…!」
知らないうちに、窓の側まで行っていたらしい一平さんの声。
雷が鳴り、雨が降り、灯りが途絶えた。
爆撃機のエンジンが鳴り、爆弾が降り、街は灯りを消す。
まるで、空襲の時のような空。
本来空襲の際は、警戒警報と空襲警報というのがなる。
警報音を聞いた人々は、家の灯りをすべて消して、防空壕などの安全な場所へ、避難するのだ。
その狭い穴の中で、爆撃機の飛ぶ音に怯えながら、爆弾の雨に耐えなければならない。
そんなことが、日本のあちこちで起きている。
「…喜代、おいで。」
「っ…!」
一平さんが、私の手を引いた。